業務委託で入ってもらってひと月が経った。頼んだ作業はきちんと上がってくる。でも「次は何をしますか?」と毎回聞かれる。こちらの手が空くのを、相手は待っている。
「もう少し自分で考えて動いてほしい」と思う瞬間がある。
確認の連絡が多い。指示がないと止まる。判断を求めてくる頻度が高い。こちらが忙しいタイミングに限って、細かいことを聞いてくる。
こういうとき、「この人は自走力が低い」という結論に向かいやすい。しかしほとんどの場合、問題は人ではなく、環境にある。
「自走」とは何かを、一度分解してみる
自走とは、指示なしに判断して動くことだ。しかし判断するためには、何かが必要だ。
目的。優先順位の判断軸。どこまでの決定を自分がしていいか。失敗したときの影響範囲。自分の判断が期待に近いかを確かめる方法。
これらが揃っていないと、動こうとしても動けない。動いて失敗するリスクを避けて、「確認してから動く」という行動を選ぶことになる。
それは委縮ではなく、合理的な判断だ。
渡していると思っているが、渡っていないもの
発注側が「伝えた」と思っているものと、外部メンバーに「伝わった」ものは、しばしばずれている。
仕様は伝えた。しかし優先順位は伝えていない。期限は伝えた。しかし「この期限は絶対か、多少ずれても大丈夫か」は伝えていない。タスクは渡した。しかし「このタスクの目的は何で、どんな状態が完了なのか」は伝えていない。
外部メンバーが判断に迷うたびに確認するのは、それらの情報が手元にないからだ。確認のたびに「また聞いてくる」と感じるとしたら、まず渡せていなかったものを確認する方が早い。
自走できる環境を作る3つの要素
自走してほしいなら、自走できる環境を先に作る必要がある。
ひとつ目は、判断軸の共有だ。「品質とスピードのどちらを優先するか」「迷ったときはどちらを取るか」を言葉にして渡す。「品質重視で」は判断軸ではない。「公開前日でも修正する」「軽微なミスは後で直す」といった具体性が必要だ。
ふたつ目は、裁量の範囲を明示することだ。「この範囲の判断は自分でしていい」「これは必ず確認が必要」という境界線を作る。範囲が曖昧だと、全部確認するか、全部自分で決めるかの二択になってしまう。
みっつ目は、小さな判断を褒めることだ。自分で判断して動いたときに、それをポジティブに受け取る反応を返す。「確認せずに動いてくれてよかった」という一言が、次の自走を作る。
自走の芽を摘んでいるもの
自走を期待しながら、自走の芽を摘んでいることがある。
外部メンバーが自分で判断して進めたとき、事後に「なぜ確認しなかったのか」と言う。小さな決断を覆す。「こうじゃなくてこうしてほしかった」を後から言う。
これが続くと、外部メンバーは「どうせ確認した方が安全だ」という学習をする。自走を促す言葉よりも、自走のリスクを下げる行動の方が強く働く。
自走は、育てるものだ
自走力は人によって固定した能力ではない。環境が整えば自走し、整っていなければ自走しない。
外部メンバーに「なぜ自走してくれないのか」と感じたときは、「自走できる環境を作れているか」を先に問う。判断軸は渡したか。裁量範囲は明示したか。自走への反応は一貫しているか。
この問いに答えてから、初めて「この人には自走力がない」かどうかを判断できる。
自走は求めるものではなく、育てるものだ。