外部の協力者とやり取りするとき、社内向けよりも連絡を厚くする人は多い。念のため関係者全員をCCする。念のためこれまでの経緯を書き足す。念のため「認識合っていますか」と確認を入れる。

厚くすること自体は、悪い判断ではない。外部の相手には社内の暗黙知が通じない。行き違いのリスクは社内より高い。だから丁寧に、多めに伝えようとする。この動機は健全だ。

ただ、積み重なった「念のため」が、実際には何を生んでいるかを見てみる必要がある。

「念のため」は、誰のために書かれているか

CCに追加された人の多くは、そのメッセージを読まない。読んでも記憶に残らない。CCに入れる目的は、相手に情報を届けることより、「ちゃんと共有していた」という記録を自分の手元に残すことに近い。

経緯の書き足しも同じだ。相手はすでに経緯を知っている。それでも書き足すのは、後から「言った・言わない」になったときの備えだ。

確認の一言も同じだ。「認識合っていますか」と聞くのは、相手の理解を助けるためというより、自分が説明責任を果たした証拠を残すためだ。

これらはすべて、受け手のための情報ではなく、送り手の防御のための情報になっている。言うなれば保険だ。何かあったときに「伝えていました」と言うための保険を、日々のやり取りの中に積み立てている。

保険は、量を必要とする

保険としての連絡には、ひとつの性質がある。量が多いほど安心できるということだ。

1回のCCより、毎回のCCの方が安心できる。1行の確認より、経緯を全部書いた確認の方が安心できる。だから「念のため」は放っておくと際限なく増えていく。

結果、外部の協力者に届くメッセージの大半が、保険のための情報で占められる。本当に読んでほしい依頼——今週中に確認してほしいこと、判断してほしいこと——は、その保険の束の中に埋もれる。

厚く伝えようとした結果、一番伝えたかったことが伝わりにくくなる。これは皮肉ではなく、構造として当然の帰結だ。保険の情報と、本当に必要な情報は、受け手から見て区別がつかない。

信頼が足りないところに、保険は増える

「念のため」の量は、相手への信頼の量と反比例する傾向がある。

信頼している相手には、必要なことだけを伝える。信頼が薄い相手には、あらゆる可能性に備えて情報を厚くする。この意味で、「念のため」の多さは、実はその関係の信頼残高を測る指標になっている。

問題は、この保険の積み立てが、信頼を育てる方向には働かないことだ。CCが増えるほど、経緯の説明が増えるほど、相手は「自分は信頼されていないから、これだけ念入りに管理されているのだ」と感じる。保険をかければかけるほど、保険が必要な関係が固定化されていく。

保険がいらない場所を作る

この構造から抜け出す方法は、精神論で「もっと相手を信頼しよう」と言うことではない。信頼は気合いで生まれるものではないからだ。

有効なのは、保険を必要としない場所を仕組みで作ることだ。依頼した内容と、それに対するやり取りが、消えずにその案件の上に残り続ける場所があれば、「言った・言わない」の心配自体が発生しない。過去のやり取りはいつでも遡って確認できるので、経緯を毎回書き足す必要がなくなる。担当者と期日が明確に紐づいていれば、「認識合っていますか」と念押しする必要も減る。

保険が必要なくなるのは、相手を信頼した結果ではなく、記録が消えない構造を先に作った結果だ。順番が逆になる。まず仕組みで安心を作り、その安心の上で、実際の信頼関係が育っていく。

Paqutを、依頼がタスクとして固定される設計にしたのはこのためだ。チャットの中で保険をかけ合わなくても、案件の記録は消えない。CCで安心を確保する必要がなくなれば、相手に届くメッセージは、また本当に伝えたいことだけに戻る。


依頼した内容が消えずに残る場所があれば、「念のため」のCCや確認は必要なくなります。外部の協力者に届くメッセージを、また本当に必要なことだけに戻せます。

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