行政書士業務は、1件の申請が完了するまでに複数のフェーズを経る。依頼人からの書類収集、書類の確認・作成、役所への申請、補正対応、完了報告——それぞれのフェーズで担当者が動き、依頼人との確認が発生する。

この流れを案件ごとに正確に把握し続けることが、行政書士事務所の案件管理の本質だ。

行政書士事務所の案件管理が複雑になる理由

案件の種類と期日が多岐にわたる

行政書士業務は業種によって扱う申請の種類が大きく異なる。建設業許可申請、在留資格申請、会社設立、相続手続き、農地転用許可——それぞれに必要書類・提出先・標準処理期間が違う。

事務所が複数の業務分野を担当している場合、案件ごとに異なる書類チェックリストと期日が並行して動く。これをスタッフ全員が共有できていないと、「誰がどの案件をどこまで進めているか」が見えなくなる。

書類の収集タイミングが依頼人ごとに異なる

書類の収集は依頼人のペースに依存する。戸籍謄本・住民票・登記簿謄本・税務証明書——依頼人がいつ取得してくるかは読めない。書類が揃い次第、次のフェーズに移れる状態を保ちながら、複数案件を同時に管理する必要がある。

書類の提出状況をリアルタイムで把握していないと、「あの書類はもう来てましたっけ?」という確認連絡が担当者に集中する。

補正対応が予測できない

申請を提出した後、役所から補正を求められることがある。補正期日は短いことが多く、対応が遅れると申請が却下される。どの案件で補正が発生しているかを即座に把握し、担当者に割り振る仕組みが必要になる。

案件管理ツールを使うと何が変わるか

案件ごとのフェーズをタスクとして定義する

行政書士業務はフェーズが明確なため、タスク管理との相性が良い。案件ごとに以下のようなフェーズをタスクとして作成し、担当者と期日を設定する。

  1. ヒアリング・受任
  2. 書類チェックリスト送付
  3. 依頼人からの書類収集(個別に期日を設定)
  4. 書類確認・不備連絡
  5. 申請書類の作成
  6. 依頼人の最終確認
  7. 申請提出
  8. 補正対応(発生した場合)
  9. 完了・ファイリング

各タスクにステータス(未着手・進行中・完了・待ち)を設定すると、「今止まっているのはどこか」を一覧で確認できる。朝の業務開始時に全案件の状態を把握するのに、担当者への確認電話は不要になる。

依頼人との書類共有を整理する

書類の提出状況を依頼人と共有する方法として、依頼人をツールのゲストとして招待する方法がある。依頼人は自分の案件の進捗だけを確認でき、次に何の書類が必要かをいつでも見られる状態になる。

「先ほどお送りしました書類、届いていますか?」という問い合わせが、タスクのステータスを確認するだけで答えられる。

担当者の引き継ぎを記録として残す

案件の途中で担当者が変わる場合、ツールに記録が残っていると引き継ぎがスムーズになる。依頼人とのやりとり、提出済み書類の状況、補正内容——これらがタスクのコメントとして蓄積されていれば、担当者が変わった後も同じ画面を見ながら対応できる。

記録が担当者の頭の中にしかない状態は、事務所の人的リスクになる。

ツール選びで確認すること

行政書士事務所が案件管理ツールを選ぶときに確認したいポイントは以下だ。

外部ゲスト(依頼人・外部スタッフ)を招待したとき追加料金が発生しないか。 書類作成を補助してもらう外部スタッフや、確認を依頼する依頼人を招待するたびに費用が変わるツールは、人の出入りが多い事務所での費用管理が難しくなる。

案件ごとに参照範囲を分けられるか。 依頼人Aが依頼人Bの情報を見られない設計が必要だ。ゲスト招待ができても、全員が全案件を見られる状態では情報漏洩のリスクがある。

シンプルに使い始められるか。 専用の法務システムは機能が豊富だが、設定に時間がかかり、スタッフへの教育コストも高い。案件ごとにタスクを作り、担当者と期日を設定するだけで動き始められるツールの方が、実務への定着が早い。

料金比較

ツール課金モデル外部ゲスト(依頼人・外部スタッフ)月額目安
行政書士専用ソフトユーザー数・機能対象外15,000〜30,000円/月
Notion Plusシートベース課金ゲスト人数に上限あり約2,000円/人/月
Backlogプロジェクト数・ユーザー数プランによって変動2,640円/月〜
Paqut Pro社内メンバー人数で決まる無制限・無料2,980円/月

行政書士事務所は案件ごとに依頼人が変わり、外部スタッフへの依頼も発生する。シートベース課金のツールでは、招待人数によって費用が変動するため、フラット料金設計のツールの方がコスト管理がしやすい。

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